激動する経営環境下で資本政策を深化させ、
未来への成長基盤を築く

副社長執行役員 グループCFO
工藤 成生
足元、気候変動により世界中で自然災害が激甚化していることに加え、貿易摩擦や制裁措置、軍事衝突などの地政学的リスクが顕在化しています。他方で、生成AIや自動運転のようなテクノロジーの進展によりビジネスや生活が大きく変わり始めています。これらの変化は相互に影響しあい、エネルギー価格、金利、株式市場の不確実性を高めており、企業や個人にとって将来の予測が難しい環境となっています。リスクが増える、リスクが変わる社会において、お客さまの期待に応え、お客さまから最も選ばれる保険・金融グループになることで成長を実現していきたいと考えています。
不確実な状況の中で世界トップ水準の保険・金融グループとなるためには、事業ドメインをはじめ幅広い領域でERMを更に高度化していくことが重要と考えています。これまでも事業管理の高度化により資本・リスク対比の収益性の向上に取り組み、資本コストを上回らないと見込まれる事業から撤退するど、規律ある事業ポートフォリオの入替えに取り組んできました。その結果、国内損保事業に代わり海外事業が利益・ROR※1ともに主力の事業ドメインとなりつつあり、過去にめざしていたことが実績へ結びついています。
今後は資本・リスク対比の収益性のほか、キャッシュの創出力や回転速度を高めていきます。資本コストを出発点として、事業・商品等でリターン(ROI※2、ROR等)のモニタリングを強化し、常に高いリターンが見込める領域に資本を投下し、創出したキャッシュを成長投資と還元につなげる資本循環経営を強化することで、目まぐるしく変化する事業環境において成長を加速させることができると考えています。これを実現するために、中核損保2社の合併をはじめとする組織のシンプル化や、持株会社が主導する最適な組織体制を検討していきます。
※1 Return On Riskの略。リスク量に対して利益がどの程度確保されているかを示す指標
※2 Return On Investmentの略。投資額に対してどれだけの利益が得られたかを示す指標
2024年度の連結正味収入保険料(損保)は、国内損保事業における自動車保険、火災保険の増収に加え、海外保険子会社の大幅増収を主因に4,125億円(前期比+9.7%)増収の4兆6,743億円となりました。また、グループ修正利益は、国内損保事業における政策株式売却益の大幅な増加や、海外事業における利益の拡大等により過去最高益の7,317億円(前期比+3,518億円)となりました。
2025年度の通期予想は、国内損保事業で政策株式売却益が減少することを主因に6,710億円(▲607億円)を見込んでいます。政策株式売却益を除くベースで見ると、国内損保事業は収支改善により増益、海外事業も各地域で保険サービス損益の拡大による大幅増益を見込んでおり、増益基調にあります。

資本政策と株主還元については、下記ページを参照ください。
2025年8月