ERMをベースにしたグループ経営

ERM(Enterprise Risk Management)は、保険会社の経営において重要な収益(リターン)、リスク、資本という3つの経営指標をバランスよく管理していく機能を担っています。MS&ADインシュアランス グループでは、ERMを前中期経営計画「Next Challenge 2017」の推進ドライバーに捉えて、グループ経営の基盤として確立させました。
現中期経営計画「Vision 2021」においても、ERMサイクルをグループ経営のベースにおき、健全性の確保を前提に、収益力と資本効率の向上のための取り組みを強化しています。

ERMの機能と役割

 

ERMでは、リスクを取って収益を求める際、RORの高いものや高まる取り方を考え、資本の健全性(ESR※1)を維持しつつ、目標とする資本効率性(ROE)の達成を図ります。これら3者の関係は下図のようになります。

※1 ESR:エコのミック・ソルベンシー・レシオ(経済価値ベースのソルベンシー・レシオ)=「時価純資産」÷「統合リスク量」

ERMで注視する指標

ESR(Economic Solvency Ratio)とは

 

● リスク量に対する資本の充実度を示す指標です。
 

● リスク量は、事業や資産に係る損失や価値変動のリスクを統計的に数値化したものであり、統合リスク量は当社グループ全体のリスクの総額となります。また、当社グループでは、予想最大損失の再現期間として200年を用いています(つまり、200年のうち199年はその額を超えないという意味です)。

                                                                                                                           (単位:億円)

  2018年3月末  2019年3月末 前期比
ESR 211% 199% △12pt
時価純資産額 48,000 46,000 △2,000
統合リスク量 22,000 23,000 +1,000

 

ROR (Return on Risk) とは

リスクを引き受けるためには、それに見合う資本の確保が必要になります。したがって、RORが高い(すなわち、引き受けたリスクに対して得られる利益が大きい)事業は、必要な資本に対して、得られる利益がより大きい事業ということが言えます。

VA (Value Added)とは

● リスクを引き受けることによって、どれだけの付加価値が得られるかを示す指標です。


● RORがリスクに対するリターンを割合で示すのに対し、VAは得られる付加価値を実額で評価します。

ERMとリスク管理

MS&ADインシュアランス グループでは、リスク選好方針に沿って経営計画を策定し、ERMサイクルをベースに、健全性の確保と、収益力と資本効率の向上を図っています。ERMサイクルに沿って、リスクに見合った資本の配賦を行い、引き受けたリスクに対するリターン(ROR(Return on Risk))※のモニタリングを通じて、リスクコントロールやアンダーライティングの強化等を行っています。

※ROR=グループ修正利益÷統合リスク量

ERMサイクル

ERMは、企画・執行・モニタリングのサイクルを通じて実践しています。

ROR向上に向けた取り組み

引き受けたリスクに対しどれだけの利益が得られるかを示すRORの推移は、当社グループのリスクポートフォリオの収益力の状況を表しています。当社グループでは、ERMサイクルをベースにRORの向上に取り組み、2021年度のグループ修正ROE10%の達成を目指します。

リスクのコントロール

当社グループでは、「MS&ADインシュアランス グループ リスク管理基本方針」を定め、グループ内で共有された基本的な考え方のもとでリスク管理を実行しています。具体的には、当社グループの事業ポートフォリオに影響を及ぼす主要なリスク事象を洗い出し、そのリスク要因を定量・定性の両面から評価することによって、リスク管理を推進しています。当社グループのリスク管理体制の詳細は、下記のリンクをご参照ください。

・リスク管理基本方針
・リスク管理体制
・保険事業のリスク
・海外事業のリスク管理態勢
・危機管理体制(事業継続計画を含む)

 

リスクの特定

グループ重要リスク(2019年度)

 

当社グループでは、経営が管理すべき重要なリスクとして捉え、管理取組計画の策定を行い、各リスクの状況を定期的にモニタリングしています。

グループエマージングリスク

 

中長期的な視点から当社グループ経営に影響を与える可能性のある事象や、現時点では当社グループ経営への影響の大きさ、発生時期の把握が難しいものの、経営が認識すべき事象を「グループエマージングリスク」として特定し、定期的にモニタリングしています。

少子高齢化の進展

少子高齢化は国内保険市場の縮小に影響しますが、高齢者の増加および平均寿命の延伸による新たな保険ニーズは発生します。トンチン性のある年金の提供や、認知症介護状態への保障を追加し、介護への不安により手厚く備えることができる「終身介護・認知症プラン」の発売など、”元気で長生きを支える”新しい商品やサービスの開発に継続して取り組んでいます。国内の少子高齢化を見据え、海外事業を強化し地理的・事業的な分散を図る事業ポートフォリオ変革も、当リスクへの対応として重要な取り組みです。

環境災害

環境の汚染、または著しい環境への負荷を生じさせた「環境災害」の原因企業は巨額な賠償を要求され、保険会社は引受条件に応じた保険金を支払う可能性があります。気候変動や自然資源の枯渇が進むなか、社会はこうした事象に懸念を深めており、リスクは高まっていると言えます。当社グループでは、適切な保険引受および再保険手配に努める一方、環境の汚染や負荷につながる要因について、グローバルに社会の関心や法規制の動向等をモニタリングし、事業活動における環境災害リスクコンサルティングに力を入れています。

自然災害リスク管理の高度化

2018年は、国内外で数多くの大規模な自然災害が発生しました。国内では、グループ全体の事故受付件数が52万件と、東日本大震災を大きく上回る規模になりました。また、海外でも、米国のハリケーン、カリフォルニアの山火事などが発生し、大きな自然災害損害となりました。
当社グループでは、従来より、200年に1度の確率で発生するリスク量を基準に、必要な資本を確保するとともに、地震や米国ハリケーンなどの大規模な損害に対しては、ストレステストの実施を通じて、グループ全体の健全性を確認できる体制を構築してきました。このため、2018年度も財務健全性は適正水準に維持し、安定的な事業継続を行うことができました。
しかしながら、近年、大規模なハリケーンや台風が頻発するようになり、自然災害はその規模と頻度を増しています。こうした状況を受け、当社グループでは、米国風水災リスク量計測手法の精緻化や、ストレステストの強化、アジアの自然災害リスクの研究・評価の推進など、自然災害リスク管理の一層の高度化を図っています。

自然災害リスクの保有量のコントロール

国内自然災害の損害額は過去最大規模となりましたが、再保険による保険金の回収が機能し、また今回のような多額の保険金支払いに備えて、毎期積み立てている異常危険準備金の仕組みも機能して損失をカバーしました。グループ全体で自然災害リスクの保有量のコントロールの強化と期間損益の変動リスクの低減へ向けた取り組みを推進・強化しています。
具体的には、
(1)グループ全体で自然災害リスク量を抑制
・米国風水災等のリスク量を抑制します。
・受再ビジネスは個別に収支状況の管理をさらに強化します。
(2)期間損益の変動リスク低減
国内自然災害において、三井住友海上、あいおいニッセイ同和損保はそれぞれの再保険カバーを拡充し、それに加えて、年間累計の損害を対象とする共同の再保険カバーを新設しました。これにより10年に1度の年間損害を前年比約20%削減し、グループ損益に関する変動リスクを低減します。

サイバーリスク分野の取り組み

グループ共通の課題であるサイバーリスク分野に関し、グループ内連携態勢を構築しました。
インターリスク総研と三井住友海上、あいおいニッセイ同和損保が強固に連携し、総合的な企業向リスクコンサルティング・リスク診断サービスを展開しています。

ベライゾンジャパンおよびビットサイトテクノロジーと提携し、リスクを多面的に評価するサービスを開始しました。(2018年2月)

米インサイト・サイバー・インテリジェンスと提携し、インテリジェンス情報提供サービス(IntSights)を開始しました。(2018年7月)

インターネット空間における情報を、独自のアルゴリズムと機械学習を用いて収集・分析します。

インテリジェンス情報に関する月次レポートを提供します。