CDOメッセージ

経済的な補償だけを行う保険会社から、
デジタルを活用して
お客さまの課題を解決する保険会社へ

 

執行役員 グループCDO(DX推進)
本山 智之

現状認識

近年、世界的な感染症の流行や地政学リスクの高まり、サイバーテロや気候変動に伴う自然災害の増加など、社会のリスクは着実に高まっています。一方で、テクノロジーの進展という社会変化は、私たちがお客さまのためにできることや、ビジネスの可能性を広げてくれました。さまざまなデータを分析することで、災害や事故の発生率を高い精度で予測できるようになり、事故が起きた際に迅速な復旧を可能とする技術も登場しています。私はCDOとして、当社グループ内外のあらゆるデータを活用し、また先端技術を用いて社会課題の解決を試みている多くのスタートアップ等と協業することで、保険に留まらない新たな価値をお客さまに届けられると考えています。事故や災害を100%防ぐことはできませんが、もしもの時に、お客さまの困りごとを少しでも軽減し、回復を手助けすることができれば、お客さまに喜んでいただくことができるのではないかと思っています。また、ビジネススタイルの大変革として従来の業務のあり方を抜本的に見直します。補償(保障)前後のソリューションの強化、手続のフルデジタル化、デジタル人財への投資等を通じて、「経済的な補償だけを行う保険会社」から「経済的な補償に加え、リスクの予兆検知や予防、事故発生時の早期回復、再発防止まで、デジタルを活用してお客さまの課題を解決する保険会社」へと改革していきます。

中計経営計画(2022-2025)第1ステージの振り返り

中期経営計画(2022-2025)の前半は、MS&ADインターリスク総研を中核としたCSV×DX取組を推進しました。従来の保険による経済的損失の補填だけではなく、事故の予防や事故発生時の負担軽減、事故後の早期復旧や再発防止といった、補償(保障)前後のソリューションを開発し広くお客さまに提供することで、リスクソリューションのプラットフォーマーとしてお客さまや社会の課題解決に取り組みました。例えば、サイバーセキュリティに関するソリューションが挙げられます。近年生成AIも活用した巧妙なサイバー攻撃が増加していますが、サイバー攻撃を受けないようにサプライチェーン全体の脆弱性リスクを診断・評価できるソリューションや、専門的なサイバーインシデント対応を包括的に行うソリューションを開発しています。

※1 組織の外部(インターネット)からアクセス可能なIT資産を発見し、それらに存在する脆弱性などのリスクを継続的に検出・評価する一連のプロセスのこと。
※2 サイバーインシデント対応時におけるフォレンジック業者や、弁護士等社外、及び経営や関係部署との窓口等社内関係者とコミュニケーションを取り、被害の最小化・早期復旧等に向けた統合調整を行う。

最新技術・ビジネスモデルの取り込み

また、MS&AD Ventures※1、グローバル・デジタルハブ※2、Aioi R&D Lab-Oxford※3では、世界の先端技術やビジネスモデル等を研究しており、さまざまな企業との共創を通じて、お客さまニーズに応える魅力的なソリューションの開発や新しいビジネスの創造をめざしています。
生成AIについては、グループ約3万人が安全に利用できるセキュアな環境を構築しており、検索・翻訳・要約・画像生成といった日々の業務に活用しています。また、事故対応業務におけるお客さま等との通話内容を自動でテキスト化し、生成AIにより要約するシステムを導入するなど、実際の業務プロセスへの組込みによる業務効率化も推進しています。


※1 2018年にシリコンバレーに日系保険グループとして初めて設立したCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)
※2 三井住友海上が国内外に設置した6つのデジタル拠点(東京、米国、ロンドン、イスラエル、シンガポール、上海)
※3 あいおいニッセイ同和損保がオックスフォード大学のAIベンチャーであるMind Foundry社と共同設立した、
     最先端のテクノロジーやサイエンスの研究開発活動を行う共同研究所

業務プロセス改革

更に、お客さま本意の業務運営に向け、改めて当社グループの商品や業務プロセスのあり方を見直します。これまでは、多くのお客さまのご要望に応えられるよう、さまざまな特約や多くの保険料払い込み方法等をご用意してきました。しかし、このことが商品の複雑化を招き、また契約・保険金支払に係る手続時間短縮の支障にもなっています。中期的な取組みにはなりますが、お客さま・代理店の皆さまにとって、最も望ましい商品や業務プロセスとはどのようなものかを今一度全社で検討し、デジタル技術をフルに活用して、分かり易く利便性の高い商品・業務プロセスをめざします。

デジタル人財育成

このような取組みを行うのに最も重要なのは人財です。当社グループでは、東洋大学や京都先端科学大学などの大学と連携し、2018年度からデジタルやイノベーション人財の育成に注力しており、2025年度にはグループで7,000名の人財の育成を目標にしています(2024年4月時点で約5,800名を育成)。また、データサイエンティスト等の専門人財を社内外から積極的に登用し、ジョブ型の職種として働きやすい環境を整えています。