社会課題の解決への挑戦を保険の価値に

 

保険の価値とサステナビリティ

MS&ADインシュアランス グループは保険の役割について「経済的な損失を補填することだけではなく、リスクを見つけて予防することや、リスクの影響を少なくすること」と考え、お客さまの安心・安全な暮らしと事業活動を支えています。現在や将来、お客さまが直面する課題の解決に向けて伴走することは、その最も大切な柱です。
また、保険ビジネスの持続可能性は、社会の持続可能性からもたらされます。保険のニーズは「今日の暮らしや事業を明日も続けたい、明日はもっと良くしたい」と願うこと から生まれるからです。私たちがサステナビリティの重点課題としている「地球環境との共生」「安心・安全な社会」「多様な人々の幸福」は、社会の課題であり、同時に私たちの事業が依って立つ基盤でもあるのです。 お客さまが直面する社会課題の解決に、お客さまとともに取り組むこと。これこそが保険本来の役割であり、当社グ ループの持続的な成長を可能にする唯一の解だと、私は確信しています。そして、その取組みは、全役職員が「日々の仕事が社会課題の解決につながっている」と心から実感することからもたらされると考えています。

 

仕事に織り込み「稼ぐ力」に

2024年度から全役職員の仕事とサステナビリティとのつながりの共有が確実に実践されるよう、組織や個人の計画、目標にサステナビリティを織り込んでいます。そして、計画や目標に沿って、気候変動や自然資本・生物多様性、人権尊重への対応などの課題解決にお客さまとともに取り組み、振り返る、というサイクルを回しています。
毎年開催する「MS&ADサステナビリティコンテスト」を振り返りの場の一つと位置付けていますが、今年度は、当社グループの「稼ぐ力」を生み出すことを開催目的として掲げ、お客さまの課題解決に向けた社員のチャレンジを後押しする機会としました。

 

「グリーンレジリエンス」で共に行動する

私たちは2023年11月、国内主要取引先に係る温室効果ガス(以下「GHG」)排出量削減について、2030年までの中間目標※1を設定し、公表しました。最重要課題である気候変動への対応において、自社のGHG排出量削減に取り組むことは当然として、保険引受や投融資を通じた取引先のGHG排出量を削減することこそが、保険・金融 サービス事業者としての使命であるはずです。多くの取引先とともにこの難題に真っ向から向き合うことで課題解決への貢献度を高めるとともに、当社グループにとっての事業機会も獲得したい。その思いから、一定規模の収入保険料のある取引先を、業種を問わず目標設定の対象としたものです。 また、私たちは、自然の恵みを生かし、生物多様性を守りながら、自然災害の被害を和らげ、地域も活性化する好循環を生み出すという考え方を「グリーンレジリエンス」と称し、自然環境の保全・回復活動に取り組んできました。経営理念と密接なつながりを社員が実感しやすいことから、「グリーンレジリエンス」をスローガンに、商品・サービス の開発を通じてお客さまへの新たな提供価値としていきたいと考えています。 具体的には、河川や地下水の流れを解析できるベン チャーと連携し、企業の水関連リスクを評価し、開示を支援するサービスの提供を始めたほか、都市開発や農地開発などの企業活動による環境・生物多様性への負荷が財務に及ぼす影響を評価するツールを開発しています。
また、2023年2月に結成した金融4社のアライアンス※2を通じ、有望なソリューションを持つスタートアップへの投資、育成を行うことや、大規模産業立地による地下水資源の枯渇が懸念される地域における「ウォーターポジティブ制度」※3を創設することにも挑戦しています。 更に、大規模な開発に伴う生物多様性の毀損リスクやサプライチェーンにおける認証取得状況を確認する「環境・ 社会リスク評価」※4についても、自然資本の保全や防災・ 減災の観点から、大規模な開発を伴う再生可能エネルギー発電所の一部も対象としていきたいと考えています。 気候変動への対応は、自然資本の保全や防災・減災と両立させる必要性がある一方、近年は再生可能エネルギー の導入が急速に拡大しており、自然環境への負荷の増大が課題となっているためです。 「環境・社会リスク評価」を取引先との対話に一層積極的に活用し、環境や地域社会への影響を抑える有効な手段としていきます。

※1 国内主要取引先約3,300社のGHG排出量を2030年度までに2019年度比 37%削減します。
※2 株式会社三井住友フィナンシャルグループ、株式会社日本政策投資銀行、農林 中央金庫との4社で立ち上げた「ネイチャーポジティブ金融アライアンス; FANPS」
※3 土地の利用や改変などで雨水の浸透量を削減させた事業者が、自然に根ざした 解決策によって地下水涵養量を増やした事業者に対し、復元相当分以上を支 払う制度。
※4 現在、未開拓の場所への大規模な開発を伴う農林水産事業、水力発電の新規プ ロジェクトを対象としています。

誇りを胸に社会を変える

お客さまが直面する社会課題の解決にお客さまとともに取り組むことが私たちの役割であり、お客さまに提供するべき価値であると全役職員が信じ、行動することで、当社グループがお客さまから高い評価を獲得していくはずです。お客さまからの高評価を通じて、私たちは保険の価値と仕事への誇りを確認し直し、胸に刻み直すことでしょう。そのスパイラルに様々なステークホルダーを巻き込み、社会を変える大きなうねりにしていきたい。
それが当社グループの目指す姿です。

 

常務執行役員 グループCSuO  本島なおみ