多様化、複雑化する社会課題

 

近年、パンデミックや地政学リスク、自然災害の激甚化、デジタル技術の進展など、世界の安心と安全を揺るがすさまざまなリスクが明確に現れてきています。また、新型コロナウイルス感染症の拡大を機に、人々の価値観や生活スタイルが変化し、お客さまをはじめとするステークホルダーの期待やニーズも、多様になってきています。更に、気候変動のようなグローバルな課題においては、政治的、地政学的な要素が絡み、社会課題が複雑化する傾向も強まっています。

 

MS&ADは、「こうしたリスクを誰よりも先に見つけ、お客さまや社会に知らせること」を起点に、「リスクを予防する機能」「リスクの影響を小さくする機能」を加え、3つのアプローチで、社会課題を解決する商品やサービスを提供しています。

MS&ADの「重要な社会課題」とパートナーシップ

 

MS&ADは、ステークホルダーと当社の双方にとって重要 な 社 会 課 題を「 地 球 環 境との 共 生( Planetary Health)」「安心・安全な社会(Resilience)」「多様な人々の幸福(Well-being)」の3つと定め、その解決に向けて取り組んでいます。

 

3つは一見、別個の課題と見えますが、相互に深く関わっており、統合して取り組む必要のあるものです。

ストックホルム・レジリエンス・センターによる「SDGsウェディングケーキモデル」は、SDGsの17目標が3階層から成り、それらが密接に関わっていることを、ウェディングケーキの形になぞらえたものです。また、頂点の「パートナーシップで目標を達成しよう」は、複雑化した社会課題の解決にはパートナーシップが不可欠であることを示しています。

 

MS&ADにとっての重要な社会課題に置き換えると、「多様な人々の幸福」は「安心・安全な社会」によって成り立ち、「安心・安全な社会」は最下層の「地球環境との共生」、つまり人々が生活するために必要な自然環境によって支えられていることを意味しています。

 

例えば、MS&ADは自治体や研究者、地域のNPOと協働し、自然環境を再生して保全する「MS&ADグリーンアースプロジェクト」に取り組んでおり、社員と家族が参加しています。自然資本の回復や生物多様性の向上をめざすことで、頻発・激甚化する水害の被害を軽減することにつなげ、安心安全な社会とすることを通じた地方創生にも貢献することを狙っており、自然の恵みを活かして課題解決するNature based Solutionを実践するものです。

社員の日常の仕事でCSVを実現

 

MS&ADは2018年度から一貫し、サステナビリティやCSV(社会との共通価値の創造)を戦略の柱としています。組織の年度計画にCSVを織り込み、取組みを進め、ふり返る。一連のサイクルがグループで共有され、今やグループ全社員の価値観に深く織り込まれています。ふり返りの一環として毎年開催する「サステナビリティコンテスト」には、これまでに約2,000件の取組みが報告され、社会課題の解決に具体的に貢献しています。

 

このサイクルを着実に回すこと、ステークホルダーとのパートナーシップを通じて発展させることこそが、当社グループがめざす「レジリエントでサステナブルな社会」に近づく唯一の道であり、社員一人ひとりのウェルビーイングももたらすものと信じています。

 

2023年10月

常務執行役員 グループCSuO  本島なおみ

熊本県球磨川流域での活動。2020年の豪雨被害を教訓に、上流の湿地を保全することによって生物多様性を向上させながら雨水の貯留効果を高め、水害の減災に取り組む。