枝廣 淳子氏

 

大学院大学至善館 教授、幸せ経済社会研究所所長、有限会社イーズ 代表取締役

異常気象の頻発やそれに伴う被害の拡大を目の当たりにし、保険事業者の役割の大きさを改めて感じます。MS&ADは、「レジリエントでサステナブルな社会」を目指す社会像に据え、SDGs(国連の持続可能な開発目標)を道標にすることを明確に謳い、このビジョンと道標に沿って事業活動を進めようとしていること、KPIの設定や国内外のイニシアチブへの参画など、しっかりした活動をしていることが伝わってきます。レポートで取り上げている内容も包括的で、わかりやすく読みやすいレイアウト・文章で構成されています。

 

今後のさらなる向上に向けて、何点かコメントします。

 

サステナビリティ・レポートとは、会社としての持続可能性に対する考え方、方針・取り組みに加えて、目標に対する進捗や実績、それらの考察に基づく今後に向けての進め方を報告するものです。

 

考え方と方針・取り組みに関しては、「自社のできること」の延長線上だけではなく、「地球と社会の課題からすべきこと」を考える根本的なアプローチを取っていること、SDGsを枠組みとして用い、自然資本や人権等、ともすれば取り組みが後回しになりがちなテーマについてもしっかり考えるなど、広い視座を持って取り組んでいることを高く評価します。

他方、そういった方針に対して、この1年間の報告部分が弱い印象を受けます。

例えば、人権や働き方についても社内の制度の紹介にとどまっており、そういった制度や機会をどのぐらいの社員が活用しているのか、その規模感は全社的に見たときにどうなのか、経時的な進捗度合はどうなのか、現状を会社はどのように評価しているのか、今後どのように展開していこうと考えているのかーーこれらが年次レポートに期待する内容です。それによってPDCAが回り、サステナビリティ経営が前進していくのだと思います。

テータ集は最後にありますが、データだけでは、それが何を意味するのか、また会社がそのデータをどのように捉えているのかが伝わってきません。本文の中にも主要な実績データとそれに対する考察を入れていってください。

 

次に、テーマとしてさらに力を入れていただきたいことがあります。1つは温暖化の緩和策です。「2050年にCO2を70%削減」という長期目標を設けているものの、到達のための方策や進捗、課題などを、社会と共有しながら進んでください。環境省のSBT策定やサプライチェーン排出の算定を行うプロジェクトに参画しての成果をどのように取り入れていくかも報告してほしいところです。また、エネルギーからの排出が主ですので、省エネにとどまらず、積極的な再エネの開発・利用をどのように進めていくかを知りたいと思います。できれば早い段階でRE100を目指すなどの先進的な取り組みを期待します。

2つめは、温暖化の適応策です。今後否応なく進行する温暖化の影響に対して、一般の人々の適応策をどのように手伝えるか、さまざまな工夫とプロジェクトを期待します。

3つめは、途上国への取り組みも重要で素晴らしいですが、SDGsは先進国の課題も含むものですから、格差が広がりつつある国内の「誰も取り残さない」ための取り組みも期待しています。

4つめは、日本の大きな課題である人口減少への対応です。今後、家族以外の人々が共に住むという選択肢が重要になってくると考えています。他人同士が共に住むことで起こるさまざまなリスクにどう対応できるかが鍵です。新しいリスクの一つとして、さらなる取り組みを期待します。

 

社会とのコミュニケーションの範囲を、次世代や途上国、世界の有識者などさらに広げることで、さらに高い視座での目標設定や取り組みを展開し、内外をリードしていくことを期待しています。

 CSRレポート 第三者意見を受けて

 

『MS&ADインシュアランス グループ サステナビリティレポート2018』へ貴重なご意見をいただき、誠にありがとうございました。

 

2017年度は、中期経営計画「Next Challenge 2017」の最終年度として、「品質向上への取り組み」と「事業を通じた社会的課題解決への貢献」に取り組みました。具体的には、「事故防止、防災・減災」、「気候変動への対応」、「高齢社会への対応」、「地域社会の発展」といった解決が強く望まれる社会的課題に対して、当社のビジネスモデルである「多様なリスクを見つけ、お伝えする」「リスクの発現を防ぎ、リスクの影響を小さくする」「リスクが現実となった時の経済的負担を小さくする」ための商品・サービスの提供を通じて、社会とともに価値を創造していく取り組みを進めてまいりました。

 

2018年度は、中期経営計画「Vision 2021」において定めた2030年に目指す社会像「レジリエントでサステナブルな社会」の実現に向け、SDGsを道標に取り組みを進めてまいります。具体的には、ステークホルダーとの対話と当社事業への影響を踏まえ7つの重点課題を設定しました(①新しいリスクに対処する、②事故のない快適なモビリティ社会をつくる、③レジリエントなまちづくりに取り組む、④「元気で長生き」を支援する、⑤気候変動の緩和と適応に貢献する、⑥自然資本の持続可能性向上に取り組む、⑦「誰一人取り残さない」を支援する)。急速に変化する環境下で発現するさまざまなリスクへの対応に対する社会の期待が高まっています。保険・金融サービス事業者である当社ならではの強みを活かし、SDGsが目指す地球環境・経済・社会の調和に貢献する取り組みを実践してまいります。

 

評価いただきました「考え方と方針・取り組み」に関しましては、今後も地球と社会の課題から取り組むべきことを見出すアプローチを続けてまいります。ご指摘の報告面における課題につきましては、個々の取り組みの評価、今後の展開、社会への貢献度、具体的な数値など、一連のつながりをわかりやすく整理し、取り組みの性質に応じた報告内容の充実に、今後、努めてまいります。

 

助言いただきました「力を入れるべき4つのテーマ」につきましては、引き続きステークホルダーとの対話を深め、社会と課題を共有しながら進めてまいります。

1つ目の気候変動の緩和策につきましては、当社自身の対応策のスピードアップを図るとともに、関係省庁や国連機関との連携、プロジェクト参画等を通じ、脱炭素化の推進に取り組み、活動の成果や報告の充実をはかります。

2つ目の気候変動の適応策は、かねてより注力しております自然災害を対象とした分析モデルに基づくリスクマネジメントや、天候リスクに備える商品・サービスの提供などを通じ、社会のレジリエンス向上に貢献します。

3つ目の国内の「誰一人取り残さない」取り組みにつきましては、国や地方公共団体との連携を通じ、リスク・コンサルティングサービスの提供や環境・社会と調和する取り組みにより、地域の独自性を活かした解決策を引き続き提案してまいります。

4つ目の人口減少が進むにつれて必要性が高まるとされているシェアリングビジネスへの対応ですが、事業を取り巻く賠償責任リスクへの補償をはじめ、商品・サービスの提供を通じて社会の安心・安全に寄与する取り組みを進めます。

 

今年度からの4年間を対象とする中期経営計画「Vision 2021」は、2030年のゴールに向けた大切なステップとなります。経営理念に掲げる「活力ある社会の発展と地球の健やかな未来」を支えるためには、地球と社会の課題の解決なくして実現できません。MS&ADインシュアランス グループは、今回助言いただいた点も踏まえ、ステークホルダーとの対話の機会や範囲を拡大し、当社のビジネスモデルである「価値創造ストーリー」の実践を通じ、社会と企業の価値の創出に持続的に取り組むとともに、その普及・啓発活動にも力を入れ、レジリエントでサステナブルな社会づくりに貢献してまいります。

 

MS&ADインシュアランス グループ ホールディングス株式会社

総合企画部長 白井 祐介