MS&ADインシュアランス グループでは、中期経営計画「Next Challenge 2017」の推進ドライバーの中でも、「ERM経営」の推進を「機能別再編」の完遂と並ぶ2本の柱の一つと位置付けています。
「Next Challenge 2017」の経営数値目標である「グループコア利益」の向上および「AA格相当の財務基盤」の達成に向け、ERM(Enterprise Risk Management)経営は大切な役割を担っています。

ERM経営の全体像

ERM経営の役割・機能

 

  • ERMは、保険会社の経営において重要な収益(リターン)、リスク、資本という3つの経営指標をバランスよく管理していく機能を担っています。
     
  • ERMにおいては、リスクを全社的視点で定量的・定性的に把握して適切に管理していくことが求められます。
     
  • ERMでは、修正時価純資産(資本)とリスク量を計測して、資本とリスクとのバランスを保つ必要があります。特に金融市場の変化等によって、資本とリスクは変動するため、そうした状況を踏まえた健全性の維持が重要になります。

※1 統合リスク量は、200年に1度の確率で当社が被る損失。時価で評価されている。
※2 修正時価純資産とは、経営のバッファとしての純資産管理を徹底するために使用している指標で、連結純資産に異常危険準備金、生保保有価値、その他資本性負債等を加えたもの。

ERMサイクル

ERMは、経営のPDCA(Plan、Do、Check、Act)というサイクルを通じて実践されます。

Plan (1)リスクの特定・把握によって当社グループが保有するリスクを定量的・定性的に把握します(以下A.リスクの特定をご覧ください)。
(2)リスク選好と経営資源の配分を決定し、経営計画を策定します(以下B.リスク選好と経営資源の配分による経営計画の策定をご覧ください)。
Do (3)経営計画にもとづき事業を推進します。
Check (4)実際のリスク選好状況をモニタリングします。
さらに(5)リスク選好対比での事業評価を行います(以下C.リスク選好状況のモニタリングと事業評価をご覧ください)。
Act Checkによって問題が生じた場合には、対応策・改善策等が策定されPlanの見直し等を行い、再びDoとして実行します。

※大規模システム開発プロジェクトの計画の進捗遅延、計画未達、予算超過、期待効果未実現等を含む

  • 取組例:サイバーセキュリティ(上記No.9)に関する態勢と取り組み

サイバー攻撃に対応するため、不正な侵入を防ぐ「入口対策」、情報流出を阻止する「出口対策」、社内で不正なウイルスや挙動を検知する等の「内部対策」の多層防御対策を講じています。また、社員教育・啓発や、実際に攻撃を受けたことを想定した対応演習等、人的・組織的な対策も実施しています。さらに、セキュリティの専門組織(MS&AD-CSIRT※)を設置し、情報システムの脆弱性情報の収集、グループ各社間の情報連携を行っています。

※ Computer Security Incident Response Teamの略。当社グループ内で情報セキュリティを専門に扱うチームをいいます。

【グループのエマージングリスク】

中長期的な視点から当社グループ経営に影響を与える可能性のある事象や、現時点では当社グループ経営への影響の大きさ・発生時期の把握が難しいものの、経営が認識すべき事象を「グループエマージングリスク」として特定し、リスクの高まりを早期に捉え、将来を見据えた具体的な取り組みへ繋げています。グループエマージングリスクは脅威としてだけではなく、環境や社会課題を解決する新たなビジネスチャンスを生み出すものとしても捉え、商品・サービスの開発や経営戦略の策定等に活用しています。

 

取組例

  • 少子高齢化の進展
    国内保険市場は縮小傾向となる一方で高齢者の増加および平均寿命の延伸による新たな保険ニーズが発生します。当社グループでは、トンチン年金等の保険の開発・研究による新規マーケット創造や、テレマティクス技術を活用した新たな保険の提供による高齢ドライバーの事故発生頻度上昇への対応などを行っています。また、海外事業を強化し、事業ポートフォリオの変革も進めています。
  • 気候変動
    これまでに経験したことのない巨大な災害の発生は、多額の保険金支払いにつながります。当社グループでは、自然災害リスク分析モデルの精緻化やストレステストの実施、再保険の手当て等により、十分な財務健全性を維持しています。また保険等によるリスクソリューションで再生可能エネルギーの推進を支え、気候変動の緩和に努めています。気候変動の適応策としては、お客さまが被る損失を軽減するリスク評価やコンサルティングサービスを提供し、2018年には東京大学・芝浦工業大学と気候変動を踏まえた災害リスク将来予測に関する共同研究も開始しました。

     

リスクのコントロール

当社グループでは、リスク管理を経営の最重要課題と位置付け、「MS&ADインシュアランス グループ リスク管理基本方針」を定め、グループ内で共有された基本的な考え方のもとでリスク管理を実行しています。具体的には、当社グループの事業ポートフォリオに影響を及ぼす主要なリスク事象を洗い出し、そのリスク要因を定量・定性の両面から評価することによって、リスク管理を推進しています。当社グループのリスク管理体制の詳細は、当社オフィシャルWebサイトに掲載しています。

保険事業のリスク

当社グループでは、保険事業に係るさまざまなリスクを、保険引受リスク、資産運用リスク、流動性リスク、オペレーショナルリスクの4つに分けて、リスクの管理状況や管理体制の整備状況につき、確認・評価を行っています。また、リスク量を計測し、リスクの水準がグループの体力(資本)に見合ったものになっているかどうかを定期的に確認しています。

保険引受
リスク
保険事故の発生率や事故・災害の規模が予測を超えて変動することにより保険収支が悪化するリスク
資産運用
リスク
金利、株価、為替、不動産価格・賃貸料等の変動や投融資先の財務状況等の悪化によって、保有する資産(オフバランス資産を含む)の価値や収入が減少するリスク、負債特性(保険金の支払い)に応じた資産を確保できないことによるリスク
流動性
リスク
巨大災害等による資金流出により資金繰りが悪化し、資金の確保に通常よりも著しく低い価格での取引を余儀なくされることにより損失を被るリスク(資金繰りリスク)。市場の混乱などにより市場において取引ができなかったり、通常よりも著しく不利な価格での取引を余儀なくされることにより損失を被るリスク(市場流動性リスク)
オペレーショナル
リスク
業務プロセス、役職員等の活動やシステムが不適切であること、または災害等の外生的な事象により損失を被るリスク

リスク・ポートフォリオの推移

リスク選好方針を踏まえてリスクをコントロールすることにより、以下のようなリスク・ポートフォリオの構築を目指しています。具体的には、政策株式の売却を加速するとともに保険引受リスクの拡大を進めていきます。

 

 

株式リスクの削減

三井住友海上とあいおいニッセイ同和損保は、分散投資による安定的な運用収益の確保、総合的な取引関係の維持・強化を目的として、長期保有を前提に取引先の株式を政策的に保有しています。しかしながら、強固な財務体質を維持するためには、政策株式を中心としたリスク性資産の圧縮を進める必要があります。このため、当社グループでは、中長期で目指す水準および中期経営計画期間中の売却目標を定め、着実にリスク削減を行っています。

※ 2015年11月に当初計画値3,000億円より引き上げ

リスク管理の高度化

リスク量の計測手法の高度化取り組み

当社グループは、リスクを的確に把握し経営管理に活用するため、リスク量計測のための内部モデルを導入し、計測手法の高度化の取り組みを進めています。2014年度には海外拠点を含めたグループ統一のシステム基盤を構築し、2015年度より本格適用を開始、リスク量計測の高度化およびグループ全体のデータの一元管理を実現しました。

 

自然災害リスクの管理の強化

自然災害リスクは当社グループにとって、最も影響の大きいリスクの一つであり、以下の取り組みによってリスク量をコントロールし、資本効率の向上を図っています。

 

  • 保険引受リスクコントロール
    自然災害リスクを引受けている保険の商品・料率の改定や、リスク集積状況を踏まえた国内外の引受制限などの実施
  • 再保険によるリスク移転
    再保険によるリスク移転によりリスク量を調整するとともに、再保険会社の健全性の確認と特定の再保険会社への過度な集中を回避することにより、再保険信用リスクを軽減