第三者意見
足達 英一郎氏
株式会社日本総合研究所 理事
経営戦略研究部、技術研究部を経て現在、ESGリサーチセンター長。
金融機関に対し社会的責任投資のための企業情報提供を担当。
環境経営とCSRの視点からの産業調査、企業評価を専門とする。
2005年3月から2009年05月までISO26000作業部会日本エクスパート。
本書は、MS&ADインシュアランスグループホールディングスが誕生して、2回目のCSRレポートです。読者を意識してCSRレポート2011掲載取組み一覧を掲載したり、キーワード索引を可能にするなど、グループ全体を鳥瞰できるようにする工夫により、昨年版から改善したと感じました。
しかしながら、報告範囲に多くの企業を有することから生じる分かりにくさが残っています。一般的に、グループ持株会社の発行するCSRレポートの編集には難しさが伴いますが、投資家というステークホルダーは、個々の企業の取組みばかりでなく、株式発行主体としての持株会社の戦略性や統合メリットという点に強い関心を有しています。より分かりやすい情報開示を実現するために以下3点を提案します。
1.事業ドメインの視点を取組み構想や開示のプロセスに導入する
「国内損保」、「国内生保」、「海外」、「金融サービス/リスク関連サービス」という事業ドメインの視点を、「商品やお客さま・環境への取組み」を構想し、実践し、成果を開示する過程に導入されることを提案します。
2010年11月に発行した組織の社会的責任に関する国際規格ISO26000は「社会的責任」を「組織の決定及び活動が社会及び環境に及ぼす影響に対して,次のような透明かつ倫理的な行動を通じて組織が担う責任」として、「健康及び社会の繁栄を含む持続可能な発展に貢献する」、「ステークホルダーの期待に配慮する」、「関連法令を順守し,国際行動規範と整合している」、「その組織全体に統合され,その組織の関係の中で実践される」という行動を列挙しました。
ここで、例えば損害保険業と生命保険業では、社会及び環境に及ぼす影響が自ずと異なってくることは、明白でしょう。「社会及び環境に、自らがどのような影響を及ぼしているのか、あるいは及ぼすことができるのか」を深く掘り下げていただきたいと思います。
2.MS&ADインシュアランスグループのCSR経営の個性を作る
上記1.については、「MS&ADインシュアランスグループのCSR経営の個性を作る」ということにも繋がると確信します。例えば、「女性の活躍」や「生物多様性保全への取組み」といった領域に、そのタネは存在しているように感じました。しかし、現在の情報開示では、網羅性は担保されているものの、グループの個性や特徴として、読み取ることができないのは、やや残念でした。
3.取組みの紹介、目標の設定、成果の報告を「対」にする
取組みの紹介、目標の設定、そして成果の報告を意識して「対」として情報開示いただけるよう要望します。本書には「CSR経営を実践するためのKPIを策定している」ことが報告されており、「取組みの進捗状況を客観的な指標で可視化することにより、PDCAサイクルに沿った、より効果的な取組みが可能になる」と述べられています。こうした考え方が早期に確立することを期待します。
最後に、10月に米国ワシントンDCで開催される、国連環境計画ファイナンスイニシアチブのラウンド・テーブルでは、「持続可能性のための保険業界原則」が原案として公表される予定と聞いております。「2012年にリオデジャネイロで開催される地球サミットに向け世界の金融機関が果たすべき役割」の議論も、世界では活発に行われるようになってきました。保険会社が、気候変動問題、少子・高齢化問題、都市災害問題などの緩和や解決に貢献できる余地は、大きく存在すると考えられます。「世界トップ水準の保険・金融グループを創造します」と経営ビジョンを掲げるMS&ADインシュアランスグループには、是非、こうした領域でも、リーダシップとイニシアチブを発揮いただきたいと希望します。
社会的責任投資のための企業情報の提供を金融機関に行っている立場から、本書を通じて理解したMS&ADインシュアランスグループの社会・環境側面の諸活動ならびにその情報開示のあり方について、第三者意見を提出したものです。なお、このコメントは、本書が、一般に公正妥当と認められる環境報告書等の作成基準に準拠して正確に測定、算出され、かつ重要な事項が漏れなく表示されているかどうかについて判断した結論を表明するものではありません。
ご意見を受けて
MS&ADインシュアランス グループは昨年4月の経営統合以降、「世界トップ水準の保険・金融グループ」を目指し、中期経営計画「MS&ADニューフロンティア2013」に沿って、統合効果発揮に向けた種々の取組みを進めてきました。昨年10月にはあいおい損保とニッセイ同和損保を合併、本年4月には三井住友海上プライマリー生命(旧三井住友海上メットライフ生命)を完全子会社化し、10月には三井住友海上きらめき生命とあいおい生命の合併を予定しております。
そのような中、各グループ国内保険会社の特徴を踏まえつつ、グループ全体としてのCSR取組みを進め、CSRレポートにおいては、その全体像をいかに分かりやすくお伝えできるかという観点で作成いたしました。
今後は、足達先生からいただいたご意見を真摯に受け止め、当グループならではの取組みをさらに進め、それを現在検討中のKPIを含め、より分かりやすく、丁寧に情報開示してまいります。また、MS&ADグループにご期待いただいている社会的な役割の一つである、業界としての活動や、グローバルな取組みにも積極的に参画して参りたいと存じます。
MS&ADインシュアランス グループ ホールディングス株式会社
総合企画部長 久保田 卓
